Home>私のウチナーグチ考>サイトマップ
私のウチナーグチ考
1960年生まれ、一緒に住んでいた祖母や両親との会話は100%標準語、祖母、
両親間の会話は100%ウチナーグチで、それを聞いて育った私なりのウチナーグチに対する思い出や思
い入れを紹介します。
第48回 しんじむん
秋風が身に沁みるようになってきましたが、こういう季節の変わり目に体調を崩した時、風邪を引いた時、
私の家では煎じむん、薬効が期待できる
スープをよく飲んでいました。というか、それらは大抵不味いので、子供の頃は無理矢理飲まされていました。
一番よく飲まされたのは、風邪を引いた時のターイユしんじ。釣り好きの父が釣ってきたターイユ
(鮒)が家には常に常備?してあって、ちょっと
のどが痛い、熱っぽい、などと言ったら、それっとばかりにそのターイユにンジャナバー(苦菜)
を煎じたスープを飲まされました。魚嫌いだった私はこれが大の苦手。魚臭い上に、苦い。ずっと大嫌いでしたが、
本当によく効くし、大人になったある日、その魚のダシの美味しさが分かって「あれ?これって美味しいかも。」
と思いました。それから私は東京で暮らすようになり、間もなくして鮒を釣ってくる父が亡くなり、もう
ターイユしんじを飲むこともないでしょう。あんなに嫌いだったけど、風邪で体調が悪くなると悔しいけれど、
ターイユしんじを飲めば治るのに、と思ってしまいます。
もしかしたら、寒い時にターイユしんじと同じくらいよく飲まされたのが、肝しんじ。
これは、朝鮮人参のような細くて黄色いニンジン、ブタや牛のレバー(肝)、
イーチョーバー(ウイキョウ)を煎じて、あっさりと塩で味付けたスープ。食欲もないほど体調が悪い時は
スープだけを飲めばいいのですが、みんな元気だけど滋養強壮のためとりあえず作ってみました、みたいなときは
スープの実も食べさせられて、これが涙が出るほど嫌でしたねえ。。。レバーがまず嫌いで、ニンジンもカレー以
外では見たくない野菜、そして何より嫌なのがイーチョーバー。
アメリカ製のドロップの缶にこのイーチョーバー味のものが混ざっていて、それに当たった時は吐き出しは
しませんでしたが、今日はツイてない、とがっくりきたものです。今でもハーブとして料理の付け合せに出てくると、
うげ、イーチョーバー!と身構えてしまいます。
これはちょっと恥ずかしい話ですが、一番下の弟が小学校1年生の時蟯(ギョウ)虫検査で陽性になってしまい、祖母が
いちでーじ(一大事)、と早速市場でナーチョーラー(海人草)を買って来て、ナーチョーラーしんじ
を作ってくれました。これが、おそらく後にも先にも飲んだのはこの時だけだったと思うのですが、史上最強の不味さ。
煮込み始めたときから家中に不穏な臭いがたち込め、身震いしました。小さな弟にどうやってこれを飲ませるのだろう、
と思っていると、大人たちは、検査では陰性だった私ともう一人の弟も同じ部屋で寝ているのだから飲め、と言うではありませんか!
3つの汁椀にどろっとした深緑色のスープが並んでいて、臭いを近くで嗅いだだけで、おえっという感じです。
絶対に嫌だ、と抗議しましたが、絶対に飲め、と結局飲まされました。目をつぶり息を止めて飲んだと思うのですが、
それでもおえっとなる不味さでした。
ターイユしんじや肝しんじはたまに
飲みたいなあ、と思うこともありますが、あのナーチョーラーしんじだけは、思い出したくもありません。
でも、体の状態に合わせてさまざまなしんじむんを作って飲ませ、火傷をすれば庭に生えているルガイ
(アロエ)を塗り、私たち子供はほとんど病院にかからず、すくすく?育ちました。昔の大人は偉かったなあ、
と思います。私は子供たちがアレルギー体質だったので、幼い頃は自転車に乗せて小児科、皮膚科、耳鼻科、時には
眼科へと駆けずり回りましたが、たまには昔のようにしんじむんを作って飲ませてやればよかった、と反省
しています。
その薬効ももちろんですが、何よりしんじむんを作るという心の余裕が子育てには必要だったのでは、
と思うわけです。私には鮒を釣る能力は無いし、ナーチョーラーは体が虫だらけになったとしても飲
みたくないし、これから挑戦するとしたら肝しんじですが、
やっぱりイーチョーバーは入れたくないなあ。いつまでたっても立派な大人には程遠いですね。
10/07/13
▲ページトップへ
このページに関するご意見、ご感想はこちらまで。
|