今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。
今月は「沖縄でーびる」のその7で取り上げられた「軽便鉄道 節」が収録されているOkinawan Hits & Standardです。 

cover 曲目リスト
1.ゴーゴー・チンボーラー(アカナーズ)
2.我がー判ゆん(金城恵子)
3.軽便鉄道節(饒辺愛子,金城恵子,伊波みどり,伊波智恵子)
4.平和の願い(玉城一美)
5.ヒヤミカチ節(饒辺愛子,金城恵子,伊波みどり,伊波智恵子)
6.芭蕉布(金城恵子,伊波智恵子)
7.つんだら慕情(伊波智恵子)
8.なんた浜(饒辺愛子)
9.Lovelyやんばる(伊波智恵子)
10.御縁花(ぐゐんばな)(玉城一美)
11.あぬよーたいふー(金城恵子)
12.いちゅび小(ぐゎー)(アカナーズ)
13.白浜ブルース(金城恵子)
14.ボサノバ・ジントーヨー(饒辺愛子,金城恵子,伊波みどり,伊波智恵子)
15.西武門(にしんじょう)節(饒辺愛子)

沖縄でーびるの「その7・モノレール節」を読んでどうしても「軽便鉄道節」を聞いてみたくなり、稲 福氏に問い合わせたところ親切にもCDを送ってくださいました。オフィスで早速聞いたらガハハと一人 で大爆笑。「ちゃんぷるー・どっとこむ」はSOHOが集まっているビルに入居しているので、私が一人で バカ笑いして人格を疑われるのも何なんで、「軽便鉄道節」以外は自宅に戻って聞きました。やっぱり大 爆笑!すかしっぺみたいな可笑しさがあるのです。

今まで聴いたことのない民謡の世界。第1回で紹介した古謝美佐子が沖縄の伝統的な音楽をクラシック や外国のフォークソングと融合させて芸術的に洗練された世界を作り上げているのに対し、この Okinawan Hits & Standardに収められている曲は、ほとんどラテンやジャズ風にアレンジされて いるのにはっきり言ってやぼったい、全然洗練されていない。でも1960年代前半、ベトナム戦争前の 燦然と輝くアメリカ文化の影で、したたかに生き延びていた沖縄のポップス(当時は幼かったので意識 して聞いていなかったんですけど)という感じで、最近録音されているのに、なぜか懐かしく心地よい のです。全体的にスローテンポで、快晴の日曜日の午後、どこからともなくまったりとラジオから流れ ていたメロディ、という雰囲気。

ヒット・スタンダード曲集というタイトルなのに、全然知らない曲ばかり。「チンボーラー」「芭蕉布」 「ヒヤミカチ節」などはもちろんスタンダードですが、このアレンジでは聞いたことがありません。最 近まで洋楽一辺倒だった私にとって、沖縄の音楽は深く、面白い!と実感したアルバムです。アンダー グラウンドでキッチュな音楽を聞いてみたい、という方にはお薦めです。

さて、このアルバムの2曲目に金城恵子が歌う何とも色っぽい「我が判ゆん」という歌がありますが、 このため息を聞いた時には思わず「なんじゃ、こりゃあ!」と叫んでしまいました。この曲を何度か聞 いて、個人的なエピソードなのですが、その解釈がだいぶ変わったものになりました。

私の亡き父親は大酒飲みで、2、3歳の私をバーのカウンターに座らせて飲んでいた、といいます。 親戚の人達から、父が長女の私をいかに可愛がっていたか、という文脈でよく聞く話なのですが、「我 が判ゆん」を聞いていて、もしかしてそれは、弟を産んだばかりで身動きの取れない母が、父が色っぽ いお姉さん達とヘンなことにならないように、苦肉の策として私を連れて行かせたのではないか、とい う疑問が涌いてきたのです。当時の父は30歳そこそこで中年太り・釣りで真っ黒に日焼けする前の、 なかなかのいい男。十分あり得る話で、母に確かめてみたいのはやまやまですが、最近自分に不都合な 過去を聞かれると急に「オバア」になってしまう彼女は、「さあ、どうだったかねえ。」ととぼけるに 違いありません。

このように、個人的にいろいろ堪能できた一枚でした。

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