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春に横浜の新聞博物館で開催された写真展 沖縄・終わらない戦 後を観に行ったとき、そこでこの公演のチラシを見つけ、それ以来ずっと観たいと思っていまし た。今ではマスコミで取り上げられることも少なく、私自身震災後は基地問題に対する関心が薄れが ちだったのですが、自戒の念とこの問題を改めて問い直すため、紀伊国屋ホールで行われた公演に足 を運びました。ヤマトゥンチュが演じる普天間ってどうなの?と、あまり乗り気ではない夫 を誘って。 |
夫の感想は聞いていませんが、彼の心配は全くの杞憂だったと言える舞台でした。まず、脚本がよく できていて、作者の坂手洋二はこの普天間を執筆するにあたり2004年の米軍ヘリ墜落事件 について徹底的に調べ、基地問題についても誠心誠意考えていることが分かります。幕開けから墜落 事件の目撃証言が生々しく重ねられますが、過去に米軍が引き起こした事件も巧みに取り入れられ、 私にとっては周知の事実の繰り返しですが、沖縄の米軍基地問題をよく知らなかった観客に過去の経 緯をふまえ知ってもらう、という点では非常に成功していると思います。
ウチナーンチュでこの問題に多少なりとも関心を持っている私でも、墜落した米軍ヘリについては、 分かったつもりで本当は何も知らなかったことが思い知らされた舞台でした。ヘリのローター部分の サイズなど、細かい数字が次々俳優の口から出てきて、次第に舞台に本物のヘリが浮かび上がる感じ がしました。俳優の力量と演出の巧みさが現れた部分だったと思います。
作者も演出者も俳優もほとんどヤマトゥンチュですが、沖縄っぽさがよく出ている舞台でした。まず、 ことばに違和感がありません。この夏のNHKのドラマ「下流の宴」でことば指導をした今科子 という人が、ここでも指導しているようですが、「下流の宴」でも感じたように、いい仕事をしてい ると思います。舞台の最後にオバアが「チュニクルサッテン、ニンダリーシガ、チュクルチェ、 ニンダラン。(他人に痛めつけられても 眠ることはできるが、他人を痛めつけては 眠ることがで きない。)」で始まる長い台詞を言いますが、イントネーションといい仕草といい、完璧。平良トミ に手取り足取り教えてもらったんじゃないか、と思うほど。今科子の指導も良かったのでしょ うが、演じた女優さんも才能があり、ものすごく努力したのだろうな、と思います。
ユタっぽい(沖縄ではサーダカ生まり、と言う)若い女性を演じた女優さんの仕草や風情が、あまり にも自然で、「いるいる、こんな人。」と思え、いたく感心してこれはさすがにウチナーンチュ? とパンフを見ると神奈川出身の女優さんでした。でも、名前が崎山(沖縄によくある名前)だから、 親が沖縄出身で川崎(ウチナーンチュが多いと言われている地域)で育ったんじゃないの、とは夫の 弁。本当はどうなんでしょうね、気になるところです。本当にいい味出していました。
面白い芝居だったか、というと私は目を輝かせて「面白かった!」とは言わないと思います。でも、 非常に完成度の高い、沖縄の基地問題を提起する良い舞台でした。できるだけ多くのヤマトゥンチュ に観てもらいたいし、この普天間を沖縄でやったらウチナーンチュはどんな反応を示すのかも、 興味深いところです。
10/06/11
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