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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、2008年にリリースされた古謝美佐子の新しいアルバム廻る命 です。 

曲目リスト
1、天じゃら
2。ポメロイの山々
3。太陽ぬ子
4、黒い雨
5、黄金ん子
6。海ぬチンボーラー〜赤山
7、夏ぬサンサナー
8、秋の踊り
9、冬の花影
10、アメイジング・グレイス
11、国頭サバクイ
12、廻る命

発売直後から買う!と思いつつ何となく買いそびれていた、待望のニューアルバム。このところCD ショップへ出かけることもなく、ネットでいつでも買えると思っているせいか、意外と買っていま せん、音楽CD。数年前唄会で初めて聴いて以来気になっていたポメロイの山々でしたが、今年の琉球 フェスティバルで聴いてやっぱり素晴らしい歌だ、と肩をたたいてもらってやっと本アルバムを買いました。

最初に聞いたときの感想は、名作の誉れ高い前作天架ける橋と同じよ うに、弦楽器が三線や琉球旋律に心地良くマッチしていて気持ちいい、だけどそれだけに前作ほどの 感動は無いなあ、というものでした。で、しばらく放置していました。

でもせっかく買ったのだし、レビューも書かなければ、という少々よこしまな気持ちから何度か繰り 返し聴いてみました。聴き返すうちに、自伝的だった前作に比べ、輪廻する命の素晴らしさと、そ こから必然的につながる反戦を歌った本作はもっとスケールの大きなもので、やはり名作だと感じ 入りました。そして、歌詞のことば一つ一つがとても文学的で、歌詞カードを読んでいると文学作 品を鑑賞する時のように、身構えている自分がいることに気付かされました。

上の曲目リストですが、アルバムに付属のライナーノートから写したのですが、番号の後。になって いるものと、になっているものがあって、何か深い意味があるのかそれとも誤植か、としばし考え ましたが、大した意味は今のところ見出していません。使われている写真やグラフィックの一つ一 つに何か深い意味があるのでは、と思ってしまう作りになっています。

このアルバムで私が好きなのはやはりポメロイの山々アメイジング・グレイスで すが、理由の一つは私自身が洋楽になじんでいること、そしてさらに大きな理由が原曲が洋楽であ りながら、ウチナーグチで、完全に自分の魂の叫びとして歌い切っていること、です。天架ける橋家路も、ドボルザークの交響曲が原曲とは思えないほど見事なシマ歌になっていました。 いつか是非洋楽のカバーアルバムを出して欲しいなあ、と思います。

ヤマトグチの歌で初めて本人が歌いたいと思ったらしい黒い雨も、聴き応えがあります。ただ、 ウチナーグチでもヤマトグチでも、古謝美佐子が歌えば全て古謝美佐子節で、何の違いもない と思いました。

天架ける橋すーしすーさでも、子供時代の古謝美佐子の 子供時代の可愛らしい歌声が収録されていましたが、今回も国頭サバクイで同じフレーズ を歌う11歳の古謝美佐子と現在の古謝美佐子が楽しめます。すーしすーさの時は、可愛 いなあ、男の子みたいだな、と思っただけだったのですが、今回は歌のうまさにびっくりしまし た。さすがに声はまだ子供らしい声ですが、節回しが現在の古謝美佐子と何ら変わらず大人。子供 の頃の古謝美佐子って、美空ひばりに匹敵する天才だったのかも、と思いました。

あと、このアルバムで私のお気に入りは秋の踊り。アルバムではオリジナルや洋楽カバーが 多く、民謡をきっちりと歌っているものは意外と少ないのですが、これは端正に歌っていて好感が 持てます。そういう意味では海ぬチンボーラー〜赤山もこれぞ民謡、という感じでいいです ね。

大地の女神か巫女のような存在感の、ますます強くなっている古謝美佐子ですが、彼女が歌を通して 訴えていることが早くこの世で実現されることを、切に願ってやみません。

11/25/09

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