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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、2011年に沖縄県内でドキュメンタリーとしては異例の大ヒットを記録した映画よみがえる琉球芸能 江戸上りを 撮った本郷義明監督の、『江戸上り』の続編と言うか姉妹篇のようなドキュメンタリー映画 徐葆光が見た琉球〜冊封と琉球〜です。 

何となくお正月に鑑賞するのにふさわしい映画のような気がして、目下大学で中国の近現代史を 勉強中の娘を伴い、観に行きました。期待に違わず見ごたえのあるドキュメンタリー映画です。ただ、 『江戸上り』で一度経験している演出なので、最初に観た『江戸上り』の方が、古いものがよみがえっていくダイナミズムに どきどき、わくわくしたかもしれません。

この映画で私が目を見張ったのは、総合監修・中国ロケ統括を担当した?揚華(う・やんふぁ)氏の頑張りです。 冊封副使・徐葆光の研究家なのですが、一見中国からの女子留学生のような風貌で、可愛い感じ。その彼女が 実物がなく幻の書といわれた徐葆光の漢詩集『海舶集』を中国で発見、翻刻し、徐葆光の故郷蘇州で徐葆光の墓が あった場所を発見。その地で彼女は「ここに、中国がどれほど琉球の文化に貢献したかみんなに知ってもらう ために石碑を建てたい。」と熱く語るのですが、次の場面ではもう立派な石碑というか、彼女が設計にも関与したらしい 立派なお堂が立っているのです。で、そのお堂の細部には彼女のこだわりがいかんなく反映されていて、彼女の行動力 には全く頭が下がりました。

圧巻は、冊封料理(御冠船料理)の復元。中国の古い文献の分析や、4千年の歴史を誇る中華料理の伝統を 受け継ぐ国家級料理人からの聴き取り調査などを経て2012年、全49品の復元に成功したのです。構想から3 年かかったらしく、これもすごい仕事で、彼女の熱意に素直に脱帽。画面には琉球の宮廷料理の原型ともいうべき 料理、中国の影響の色濃い沖縄の伝統菓子が次々と現れ、お昼前だったせいか食欲を大いに刺激されました。 個人的には、久しぶりに見た鶏卵?(ちいるんこう)が色鮮やかに登場した時には、「おお、ちいるんこう!」 と叫びそうになりました。ちんすこうやサーターアンダギーは今やどこでも買える全国区のお菓子なので 東京でもいつでも食べられますが、ちいるんこうはおそらく上京してから一度も食べていません。沖縄では 売っている店もあるのでしょうが、どこにでもある、というわけではなく、お祝いの席で出る特別なお菓子で 日常的にいつでも食べられるものではないので、きっと帰省しても食べるチャンスがなかったのだと思うのです。 それが突然アップで登場したので、思わず叫びそうになったのでしょう。

個人的には料理ですが、琉球舞踊が好きな人にもたまらない映画だと思います。それぞれの踊りが短いですが 分かりやすく説明されていて、『江戸上り』の時にも感じましたが、あんな小さな島でよくぞここまで多様で 洗練された踊りが生まれたものだ、と思いました。舞踊の復元に取り組んできた人たちの熱意にも脱帽、です。 それから、沖縄て?ハンセン氏病の治療を行っていたときに徐葆光か?記した『中山傳信 録』を日本語に翻訳した 原田禹雄氏の話にも、感銘を受けました。医師としての仕事だけでも大変だったでしょうに、失われた沖縄の 文化を何とか本の中で復元したい、という思いに打たれました。

誰しも中国と日本は戦争をしたがっているのではないか、と思っている今、この映画が出てきた意義は大きい と思います。うろ覚えですが、中国は徳を持って周辺国を治め、周辺国は礼をもって従う、ということばが 印象的でした。軍事力で周辺諸国を圧倒するより、文化や外交でしたがえる方が経済的、という説明も。中国と 琉球には500年近く続いた友好関係があった(内実はいろいろ難しい局面もあったでしょうが)わけですから、 基地を強化してオスプレイを配備して、っていうよりもっと穏やかな方法があるのでは、と思います。現代 中国は清代や明代とは違うので、現実ははるかに困難なのでしょうけれど。

いろいろ考えさせられる、良質なドキュメンタリー映画でした。

1/03/14

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