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まず、タイトルにひかれました。著者の花村萬月は数年前まで三鷹市の私の家の近所に住んでいて、 10年ほど前に著者の自宅が銃撃されるという事件が起き、近所の小学校が集団登校になる、という 騒ぎがありました。著作の過激な内容に自分の名誉を傷つけられた、と憤慨した男が著者の自宅ドア に銃弾を撃ち込んだらしいのですが、そんな物騒な事件の原因となるような作品を書く人って、と気 になっていたのでした。その何年か前に芥川賞も受賞していましたし、いつか彼の著作を読もう、と 思っていたところに登場したのが、「沖縄を撃つ! 」でした。 |
刺激的なタイトルなのですが、本の内容紹介には「作家・花村萬月が、日本人と沖縄人の共犯関係で 出来上がった「癒しの島」幻想を徹底的に解体しながら、既存のイメージとはまったく違った沖縄の 姿を克明に描き出す。日本人であることの加害者性を露悪的なまでに引き受けたその眼差しは、南の 島を過剰に持ち上げたり、そこに逃避したりする日本人と、純朴な仮面を自ら進んで被ろうとする沖 縄人に対しても、等しく冷淡であり、かつ挑発的である。二〇年以上にわたって沖縄取材を繰り広げ てきた小説家による、もっとも苛烈で真摯な沖縄論。」とあります。
興味をそそられ、読まなくちゃ、と思いつつも、ウチナーンチュにとって耳の痛いことがいっぱい書 いてありそうで、何となく後回しにしていたら今になってしまった、という感じです。で、読んでみたら・・・ まず著者の自意識過剰な露悪趣味にげんなり。文章も平易ですらすら読める部分もあれば、やたら観念 的で小難しい表現が続く部分もあり、慣れるまでちょっと時間がかかりました。はっきり言って、著者 の主観と気分だけで成り立っているような本で、「二〇年以上にわたって沖縄取材を繰り広げ てきた小説家による、もっとも苛烈で真摯な沖縄論」と言うには、あまりにもお粗末な内容です。
本の大部分が沖縄での著者の、加えて著者の知り合いの買春体験を綴ったもので、私は女性なので 当然縁のない世界で、そういう意味では新鮮と言えますが、やはり同じ女性として、読んでいて気分のいい ものではありませんでした。悲しい気持ちになりました。
日米ハーフの少年に対する沖縄の扱いに憤る、というのも、ウチナーンチュの私から見たら的外れな 感じがしました。全体に、著者が沖縄の何に対して「撃って」いるのか、私には分かりにくく、最後は 自分はそれでも沖縄を愛している、感を過剰に醸し出しているのも何だか説得力がありません。後味良 く終わりたかったのでしょうか。それでもやはり芥川賞作家の力量か、中城城近くの廃墟と化したホ テルを書いた章などは読みごたえがありました。
う〜ん、私にとっては明らかにタイトル負けの本でしたが、ありきたりな沖縄紹介本に飽きた方には 刺激的な沖縄本かもしれません。
04/23/13
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