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私のウチナーグチ考
1960年生まれ、一緒に住んでいた祖母や両親との会話は100%標準語、祖母、
両親間の会話は100%ウチナーグチで、それを聞いて育った私なりのウチナーグチに対する思い出や思
い入れを紹介します。
第18回 台所のウチナーグチ
子供の頃ウチナーグチに興味を覚えた私はある日、お茶碗は方言で何ていうの?お箸は?まな板
は?と父を質問攻めにしたことがありました。身近にあるモノたちのウチナーグチでの名称がとても
新鮮だったことをよく覚えています。今回はそんな身近な、台所で使われるものや表現を紹介します。
まず前述のお茶碗、お箸、まな板はそれぞれマカイ、ウメーシ、マルチャ、です。標準語と全然違い
ますね。マカイ、ウメーシ(このウは、ンに近い発音です)は日頃よく耳にしていましたが、マルチャ
は初めて聞いてびっくりしました。ちなみにお皿はケーウチ、しゃもじはミシゲー、お玉はナビゲー
と言います。いずれも標準語とは似ても似つかぬ言葉ですねえ。鍋はナービ。こちらは標準語に近い
です。沖縄では大勢の人を呼んでヒージャー汁や中身汁を振る舞いますが、そのような時に活躍する
大鍋のことはシンメーナービと言います。
さて、次は調味料。基本は塩、コショウですがコショウを何と言うか私は知りません。チャンプルー
には欠かせませんが、ウチナーグチで聞いたことがありません。もしかして昔はコショウは使われて
いなかったのでは、という気もします。塩はマース。沖縄では出産祝いをマースデーと言いますが、
漢字で書くと塩代。むかしむかし、塩は重要だったのでしょうね。今でも大事ですが。味噌はインス、
しょうゆはそのまんま、沖縄風にしょうゆぅと語尾を少し伸ばすだけだったような気がします。
次に味覚表現に行きましょう。美味しい、はマーサン。美味しくない、マズイ、はマーコーネーン。
硬い、柔らかい、はクファサン、ヤファラサン。味が薄いことをアファサンと言いますが、極まりが
悪い、バツが悪い時に言う「アファー」はアファサンから来ているのかどうか、子供の頃からの大
疑問です。逆に味がしっかりついて旨い、というのは味くーたー。酸っぱい、苦い、はシーサン、
ンジャサン。塩辛いはシーカラサン。
ここで、今は亡き大叔母から聞いた表現を紹介しましょう。彼女の姉、つまり私の大伯母が長らく
東京・八王子の老人病院に入院していて、親戚のおばさん連中と一緒に見舞った時のこと。空いて
いる中央線で私たちの向かいの7人掛けの席には若いカップルしか座っていなかったのですが、この
カップルは私たちを全く気にせずイチャイチャ。目のやり場に困りながらもしばしチラチラ見ていた
大叔母がそっと「酢強さんやぁ」
と周囲に漏らしたのです。初めて耳にした表現で強く印象に残りました。「甘い」と表現したいよう
な、でも周囲には大迷惑な刺激の強いラブラブぶりのことをウチナーグチでは酢が強すぎる、と表現するんです
ね。面白いなあ、と感心しました。
次に、以前「富久屋」のご主人に教わったことを思い出しつつ、調理の表現。炒め物はチャンプルー
が有名ですが、同意語でタシヤーがあります。タシヤーの方が新鮮な食材をさっと炒める感じ。強火
でささっと炒めるのを我が家ではチャーラミカスンと言っていました。料理好きな弟が料理下手な私
にチャンプルーの指示をするとき、「キャベツとポークをチャーラして」などと、短縮形ウチナーヤ
マトグチ?を使っていました。煮込み料理はウ(ン)ブサー。へちまを味噌で煮込んだナーベーラー
ンブサーが代表選手です。沸騰させる、はタジラスン。
タジラスンで思い出したエピソードを最後に紹介します。昔近所に住んでいたナイチャー奥さんの
話ですが、内地から嫁いできたばかりの新婚当時、同居していたお姑さんに出かける前に「このおつゆ
タジラシておいてねー」と頼まれたのですが、よく意味が分からず何となくそのままにしておいたそう
です。夕方帰ってきたお姑さんはおつゆ鍋のふたを開けて、「だー、あんたがタジラしておかないから
シーっているさあ。」と怒っていたという笑い話。シーっている、というのはシーユン、つまり酸っぱ
くなっている、傷んで食べられなくなっている、のウチナーヤマトグチ。このお姑さんはタジラす、
シーっている、がナイチャー奥さんが当然理解できる標準語と思い違いをしていたのですね。
12/20/06
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