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しまぞーり 私のウチナーグチ考 しまぞーり

1960年生まれ、一緒に住んでいた祖母や両親との会話は100%標準語、祖母、 両親間の会話は100%ウチナーグチで、それを聞いて育った私なりのウチナーグチに対する思い出や思 い入れを紹介します。

第14回 上等とヤナー 

 今回取り上げる「上等」という言葉はごく普通の標準語ですが、沖縄では一種独特の使われ方をして いるような気がします。ヤマトでは上等と言えば、いくつか等級があるうちの最上級、という感じがし ますが、沖縄では「良い」「悪い」のどちらかで、良い方を上等と言っているのではないでしょうか。 良い方は上等で、悪い方はと言うと「下等」ではなく「ヤナー」。そして上等もヤナーも、標準語に おける上等と下等よりはるかに頻繁に、さまざまなニュアンスを持ってウチナーグチに登場するような 気がします。

 たとえば沖縄に帰省するとき、娘がよそ行きのワンピースなどを着ていると私の母は「あい、上等 洋服着けているねえ。」などと言います。対照的に、いつもGパンにTシャツの私に対しては、「あん しヤナすがいし(そんなに汚い格好して)。」と、文句たらたら。上等洋服の反対語は「ヤナすがい」 のようです。

 子供の頃、まだ数少なかったコンクリート建ての家のことを「上等おうち」と呼んでいました。それ に対し、トタン屋根やわらぶきのみすぼらしい家のことは「やな(ヤー )」と言っていました。○○ちゃんは上等お家に住んでいる、とかあの人はやな (ヤー)に住んでいるけど金持ちらしい、など と言っていたわけです。ここでも上等の反対はヤナーになっていますね。面白いことに上等、とくれば 次の言葉は標準語が多く(上等(ヤー)という 言い方もありますが)、ヤナーとくれば後に続くのは方言が多いような気がします。

 私の祖母も数ある着物の中でよそ行きは上等着物、ボロ着のことはヤナ着物 (きもの)ではなく、ヤナ着物(チ ン)と言っていました。蛇足ですが、みすぼらしい格好ばかりする人のことは ヤナ着物着る人(チンチヤー)と言います。上等 洋服に上等着物に上等お家、なんて標準語では言いませんよねえ。沖縄独特なのでは、と思います。

 また、いい気味だ、という時にウチナーグチでは「いーばーやさ」と言うことがありますが、「いー ばーやさ」の代わりに「上等やさ」と言うこともあります。クラスで乱暴者の○○君が怪我をした、と いった場合、普段彼の暴力の犠牲になっている男の子はそれ見たことか、いい気味だ、という意味で「 上等やさ」と言うのです。

 「ヤナー」は日常的に本当にさまざまに使われます。後ろに名詞が続く場合は、前述のヤナすがい、 ヤナ着物(チン)のようにヤナ、となります。悪ガ キのことはヤナ(わらばー)と言いますが、悪さ をしている彼らに向かって「こら!」と言いたい時は「ヤナ!」と言います。

 安っぽい調度品、下手くそな絵や工作、壊れた時計、映りの悪いテレビ、切れないはさみ、これらは みんな「ヤナー」で片付けられてしまうものです。反対に良いものは上等時計、上等テレビ、上等はさ み、と頭に上等をつければウチナーグチっぽくなりますね。 

 この上等、ヤナーは人を形容する時にもよく使われます。例えば親戚のおばさんなどは私の夫を褒め るつもりで、「直美ちゃん、上等当たって良かったねー。」などとよく言います。男運の悪い友人の新 しい彼について、仲間内で「今度の人もヤナーみたいよ。」と言うことも、よくある話。悪い人 (ヤナッチュ)と言われないように、日々精進あるのみ、 と思う今日この頃です。  2/9/05

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