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[ちゃんぷるー・どっとこむ応援団(チバリヨー) 寄稿]

チャービラサイ/2012.晩春

文・写真 稲福 達也

バスの中

 チャービラサイ、荻堂さん。こちらはもう半袖姿が目立つようになりました。
 先日、久しぶりにバスに乗った時のことです。首里から松川に向かう坂下通りはいつも渋滞していま すが、夜7時頃でラッシュがまだ終わらず、バスは数メートル進んでは止まってしまう状態でした。乗 客は左の最前列席に座った40代の男性と右の中程の席の私の二人だけで、渋滞にしびれを切らしたの か、やがてその男性が大きな声で運転手に話しかけました。
「沖縄の人は、ウチナータイムだからこんなひどい渋滞でもイライラしないでしょ?」ヤマトゥンチュ
夏を待つ空
夏を待つ空
だとすぐにわかる口調でしたが、観光客には見えません。「飲み会などでは約束の時間に人が集まらな いんでしょう」とか、「結婚披露宴も時間通りには始まらないらしいね」とか、ウチナーンチュ独特の 時間感覚であるウチナータイムに始まって、沖縄について自分はよく知っているんだよ、という調子で 話は続きました。話しかけられた運転手がどんな顔をして聞いていたか私からは見えませんが、適当に 相づちを打っている様子です。車は渋滞で進まないし、乗客はいないのだから、運転の邪魔になると言 う訳にもいかないのでしょう。 運転手の声がマイクからはっきり聞こえたのは、男性の話が車の運転の仕方に移り、「沖縄の人は方向 指示器を出さずに道を曲がるけど(笑い)なんでだろう?」と言った時です。一言だけこう言いました。
「フユーじゃないですかね」
「フユー」は方言で「無精」のことですから私はニヤリとして、男性はその答の意味が通じたのかそう でないのか、反応はなく話題はさらに変わりました。
「南部はさとうきび畑が多いでしょう。南部の道路を運転するとさとうきびの背丈が高いから見晴らし がきかず森の中に迷い込んだ状態になるね。そんな道を夜はどう運転しているのか訊いてみたら、沖縄 の人はさとうきび畑の中は星を見ながら運転する、と教えてもらった」男性は真面目な顔で話していま した。しかし、今度は運転手の大きな笑い声がマイクから流れてきました。
 荻堂さん。その日の渋滞で、私の目的地の三つ目の停留所まで30分もかかりましたが、たまには路 線バスに乗ってみるのもいいですね。夏はもうすぐそこです。来週あたりから私もかりゆしウエアで出 勤します。

04/17/12



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