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寄稿]
くわっちーさびら・その15
文・写真
稲福 達也
ポークでいいよ
新婚の頃の友人の奥さんから聞いた話。ある日、気分が悪くて夕食が作れずに寝ていたら、帰宅した
彼が「無理して作らないでいいよ」と言ってくれたが、それでどうするのかと思っていたら、 「可哀想
に」と布団に入ってきて添い寝をしたらしい。 彼女は涙が流れてきた。 添い寝をしてくれた事が嬉し
かったからではない。お腹が空いてきたのに、お粥のひとつも作れず、スーパーで食べ物を買ってきて
くれる智恵もない夫が情けなく、これからは何があっても自分だけはひもじい思いをしないようにしよ
うと決意した。
最近、別の友人の奥さんから聞いた話。風邪をこじらせ布団にくるまって咳き込んでい
ると、帰宅した夫がその様子を見て 「夕飯はポークでいいよ」 と言ったので頭にきたという。ポークというのは、殆ど沖縄だけで
流通している豚肉を加工した輸入缶詰で、チャンプル
ーの具など色々な料理に手軽に使えるから大抵の家に |
チュ
ーリップ印のポークランチョンミート | 買い置きがある。適当な厚さに切ってフライパン
で焼いてしまえばそれだけでご飯にもパンにも合うおかずになるから、彼は妻の身体を気遣って「ポー
クでいいよ」 と言ったに違いない。しかし、妻にすれば、缶詰のポークを自分で焼いて食べるくらいの
ことも出来ないのか、と改めて夫の不甲斐なさに怒りが湧いた訳で、はるばる海を渡ってきたポークに
は何の罪もない。
この添い寝の話からポークの話まで、歳月が30年は流れている。ウレシイことに“沖縄の女は働き者
で男は家事をしない”という構図は私の世代では変わっていないのだ。せめてあと20年はそれが続いて
欲しい。だって今更“男も厨房に入るべし”なんて言われたら、老後の不安がさらに増すだけだ。
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