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応援団
寄稿]
くわっちーさびら・その12
文・写真
稲福 達也
松茸の味
テレビで松茸の最高級品という丹波篠山産の偽物が出回っているというニュースを見た
が、松茸の話題でいつも不思議に思うのは、ヤマトゥンチュの“松茸崇拝”である。沖縄で松茸は採れず、
元来その味や香りに縁がないから、大方のウチナーンチュは私と同じ思いだろう。我が家では、国産であ
れ外国産であれ、妻が松茸を買って料理することはなく、せいぜい“永谷園の松茸の味お吸いもの”がた
まに食卓に出るだけだ。 |
永谷園の松茸の味お吸いもの |
そういえば、かつて同僚のTと東京の大学に出張した時のこと。高知県出身の理事長が土佐の皿
鉢料理をご馳走してくれた。大皿に鰹のたたきや
寿司や山海の旬を豪快に盛ったその郷土料理に目を見張りながら食べていると、松茸の土瓶蒸しが出てき
た。すると理事長のウンチクが皿鉢料理から松茸に変わり、この店の松茸の土瓶蒸しは最高だよ、とご満
悦な様子だ。ここにも“松茸信者”がいると思いながら神妙に聞いていると、Tが土瓶の中を箸でかき回
しながら興奮気味に「僕の土瓶には松茸が入っていない!」と言い出した。え?そんなはずはない、と理
事長が怪訝そうな顔で自分の土瓶の中を見
た。土瓶には紙切れのようにスライスされた松茸が2、3片入っていたので、「 ウリガ松茸ヤサ(これが
松茸だ )」とTに方言で教えると、今度はTが怪訝そうな顔をした。どうやら松茸料理を食べたことがな
い若いTは、頭の中で描いた松茸が丸ごと入っていると思ったようだ。この調子だと“松茸信者”の理事
長の気分を害しないか心配になる。私は、小声で「ヒルマシムンヤ、ダマティカメー(珍しいものは黙っ
て食え)」 と言ってTの脇腹をつついた。
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