[ちゃんぷるー・どっとこむ 応援団 (チバリヨー) 寄稿]

沖縄 (ウチナー) でーびる・その8

 

文・写真 稲福 達也

アカイユの謎

    去年の夏、那覇から程近い島の民宿で、夕食にアカイユが出てがっかりした。魚のことを方言でイユ といい、見た目通りの名前のアカイユ(赤魚)は、沖縄では唐揚げや煮付けでよく食卓にのる冷凍魚だ が、私の目当ては、 (チュ) ら海を眺め、獲れたての 鮮魚 (イマイユ)  のサシミを食べることだったのだ。しかし、期待に反したアカイユを見てふと疑問が沸いた。 それはいつも頭が切り落とされて売られている。アカイユの頭は何処へ消えたのだろう?  アカイユ

 その後、そのことを思い出しては誰彼となく訊いてみたが、誰も尾頭付きの姿を見たことがない という。輸入魚で関税を安くする為ではないかという人もいたが、それなら頭のない魚がもっとゴロゴ ロしているはずだ。しかし、先日、頭の中で冷凍状態だったその疑問が氷解した。妻がスーパーでアイ スランド産で「メヌケ」と表示されたアカイユを見たと言うのだ。初めて聞くメヌケという言葉を調べ ると、赤魚は深海魚で獲ると水圧の関係で目が飛び出すからメヌケ(目抜け)ともいう、とある。なん だ、そうか。アカイユの頭が除かれているのは、食欲が削がれるくらいに形相が変わり、商品にならな いのだ。そう考えると目から鱗の気分になったが、それにしても民宿の食事が島の 鮮魚 (イマイユ) ではなくアカイユだったのはなぜだろう。
 紺碧の海に漁船や 漁師 (ウミンチュ) の姿は見えず、畑にも人影がない夏の島は、民宿だけが建ち並び、島外の若者や海水浴客の 嬌声で溢れていた。



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