[ちゃんぷるー・どっとこむ
応援団
寄稿]
沖縄
でーびる・その6
文・写真
稲福 達也
マブヤーの行方
県外の大学に進学した姪から「不慣れな自転車通学を始めたが、学内で派手に転んでしまい、“沖縄
の人は自転車に乗れない伝説”が広がってしまった」という便りがきた。猛暑のせいだろうが、沖縄の
人口あたりの自転車保有台数は、坂の街長崎に次いで全国で2番目に低く、ママチャリの光景など殆ど
目にしないから、姪が流布した自転車伝説は当を得ているだろう。しかし、そんな伝説より、叔父さん
としては、派手に転んだという姪のマブヤー(霊魂)の方が心配だ。 |
沖縄でこんな絵葉書が売られていた |
沖縄には、事故に遭ってショックを受けるとマブヤーが身体から抜け落ち、それを放置しておくと精
気を失って病気になるというマブイウトシの言い伝えがある。特に子どものマブヤーは遊離しやすく、
子どもたちは、転んだりすると「マブヤー、マブヤー」と唱えながらマブヤーを拾って胸に手を当てる
仕草をするように教えられた。もし、マブイウトシの状態になれば、母親が、その場所から小石を3個
子どもの服に包んで持ち帰り、その服を着せて小石を持たせ、マブヤーを取り戻すマブヤーグミの儀礼
をする。子どもたちは、真剣にそういうことをしてくれる母親に暖かい愛情を感じたものだが、今の子
どもたちのマブヤーはどこに宿り、その行方はどうなっているのだろう。
その後の姪の便りでは、もう大人になったということなのか、どうやらマブヤーを落とした気配は
なく、今では雨の日に傘をさして片手で自転車に乗れるまでになったらしい。
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