[ちゃんぷるー・どっとこむ
応援団
寄稿]
沖縄
でーびる・その24
文・写真
稲福 達也
ハルサーへの道
方言で漁夫のことをウミンチュといい、農夫のことをハルサーという。漢字でウミンチュを「海人」と
描いたTシャツが若者に受けているらしいが、ハルサーを「畑人」と描いたTシャツを見かけたことがな
い。若者には「畑人」は「海人」よりダサイのだろうか。
友人のKが脱サラをしてハルサーに変身して3年目になる。それは、晴耕雨読で悠々自適ということで
はなく、独学の有機無農薬栽培で生計を立てようというのだから、Kの奮闘ぶりは並大抵ではない。佐敷
町の丘に800坪の土地を借り、彼の愛称を冠して『カッチン・エコファーム』と名付けた畑に日がな一
日いて、この亜熱帯の気候で除草剤も農薬も使わないから、雑草ニモマケズ台風ニモマケズ、病害虫ニモ
夏ノ暑サニモマケズ、という日々である。ようやく昨年から玉城村にある
花野果
村という農産物直売所にゴーヤー・ピーマン・オクラ・ナスなどを出荷するようになったが、近隣
の農家との競争も厳しいようだ。しかし、彼がメールしてくる「農家情報」は、「有機無農薬は雑草と害
虫の共存で、我が農園は相変わらず害虫の被害にあっていますが、虫たちもちゃんと食べ残してくれてい
ます」と、どこか明るい。「出荷しているとはいえ、収入はサラリーマン時代に比べるとスズメの涙!」
と嘆きもするが、今の生活に確かな充実感を感じているのだろう。
Kにはハルサーが農作業で被るクバ笠はまだ似合わないが、私には、ハルサーへの道を愚直に歩むその
姿が青い海に生きるウミンチュと同様にカッコよく見える。
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