[ちゃんぷるー・どっとこむ
応援団
寄稿]
沖縄
でーびる・その23
文・写真
稲福 達也
披露宴の片隅で
沖縄の結婚披露宴では、2〜3百人の客を招待し、新郎新婦の親戚や友人・職場の人達が趣向を凝らし
た余興を演じて宴を盛り上げる。先日招待された知人の息子の披露宴もそんな賑やかな沖縄流だったが、
私の隣席の老人も面白かった。披露宴が始まり、琉装の新郎新婦が入場してくると、黙っていた老人が
おもむろに私に言った。「先導役のホテルマンが大きすぎて新郎新婦が貧弱に見える。ホテルはそこも配
慮せんといかんね」。泰然とした老人の一言は、その後も私に向けられる。祝宴の幕開けの“かぎやで風”
の踊りが終わると、周りの人達が拍手をしているのに「今のは師匠クラスではないね」。司会が新婦はカ
レー料理が得意だと紹介すると、「健康には豆腐がいいんですよ」、等々。世事に通じたその一言居士は、
食事をしながら余興のフラメンコを一瞥して「あれはインディアンの踊りですか」と思わぬ脱線もする。
その声は同じ円卓を囲む他の客にも聞こえているはずだが、皆聞こえぬふりをしている。私は、何度か席
を外してロビーに出て、煙草を吸いながら一人で笑ってきた。
プログラムも締めくくりのカチャーシーの踊りを終え、会場も静かになって最後の両親への花束贈呈へ
と進んだ。これでようやく老人から解放されると思っていたら、新郎新婦が相手の両親に相対した時、老
人がひときわ大きな声で私に言った。「ところであなたとは初めてお会いするんですよね」。
ああ
!
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