[ちゃんぷるー・どっとこむ
応援団
寄稿]
沖縄
でーびる・その12
文・写真
稲福 達也
闘牛観戦記
闘牛は本島中部で盛んだが、私の仲間で誰も
直
に見たことがないという話になり、連れだって闘牛大会に出かけた。Tシャツで頭に手拭いを巻
き、かなりの紙幣を手にした人が入口にいて、
念のために
入口かと訊いて入場料を支払うと取組表をくれた。入場料の取り方もローカルだが、その取組表
には闘牛の解説はないから、大方の観客は解説の要らない熱心な闘牛ファンなのだろう。そう考えると
すり鉢状の観客席は興奮のるつぼに化すに違いないとワクワクしてきたが、対戦が始まると観客の反応
は意外にも静かだった。格好が不揃いの
勢子
たちが入れ替わり立ち替わり奇声をあげて牛をけしかけるが、観客は、牛の動きをじっと無言で
見つめ、勝敗がつく瞬間に少しどよめきが起こる程度で、甲子園の沖縄球児を応援する時のあの指笛も
なければ、大相撲で座布団が飛ぶようなこともない。さすがに勝った牛の持ち主はカチャーシー(喜び
の舞)を踊るが、観客はじっくり闘牛を味わっているのだ。しかし、確かに1トン前後の大きな牛が角
を突き合わせる戦いは、無駄口を叩く間もないくらい緊張感が漂い、迫力に満ちていた。ちなみに、そ
の日は闘牛のラジオ番組の収録が行われていて、敗走した牛が柵を越えて放送席に跳び込む一戦があり、
救急車が怪我人を一人運んで行った。それは新聞記事にはならなかったが、牛が飛び込んできた時の放
送席の様子は実際のラジオ放送ではどんな内容になったのか、一緒に観戦した仲間の誰もその放送を聴
いていない。
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