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ときどきやることですが、夫の書棚を物色していて偶然見つけた本です。昨年義父が亡くなり
沖縄へ帰る機会が多かったせいか、飛行機で気軽に読める内容、分量の沖縄関連の新書が意外とあるのです。
タイトルを見たときには、さして惹かれるものはなかったのですが、裏表紙の著者プロフィールにあった「
お笑い米軍基地」の企画・脚本・演出を担当した、というところ読んで、これを読もう!と決めました。 数年前沖縄タイムス主催の展示イベント会場で、「お笑い米軍基地」の舞台のビデオが上映されていて、 しばしその面白さにくぎ付けになったのでした。そして昨年観た映画やぎの冒険 で著者の小波津正光が主人公の少年の叔父さんとして、いい味を出していて、(注:原稿書いた時点で誤解していて、 映画に出演していたのは「お笑い米軍基地」の別の芸人、仲座健太さんでした)「お笑い米軍基地」を作った お笑い芸人に対して興味のアンテナが立ったのでした。 |
軽く読めて、一言で言えば面白かったです。「お笑い米軍基地」を作っただけあって、沖縄が抱える矛盾や 問題点を鋭く突っ込んでいますが、そこはお笑い芸人、ブラックな笑いを振りまきながら、軽やかに書いて います。ただ、あえてそうしたのかもしれませんが、那覇の若者のウチナーヤマト口満載の話し言葉そのまま、 っていうのはどうでしょうか。私のようなウチナーンチュにはいいけど、ヤマトゥンチュに真意がきちんと 伝わるのかどうか、ちょっと疑問です。会話の部分は「〜だば?」とか「〜やさ」でいいと思いますが、 それ以外の文章は普通の標準語でよかったのでは。私は著者より一回り以上上の年齢なので、ちょっと感覚が 古いんでしょうか。
でも、そんな自分よりはるかに若い人が、自分以上に真剣に沖縄が抱える矛盾に対する問題意識を持ち、それを 伝えよう、沖縄の長所、家族の絆や悲しみを引きずりながらも明るく生きるところ、も伝えようとしていることが、 本書を読んでいるとひしひしと感じられて、嬉しくなりました。こういう人がいる限り、沖縄は大丈夫さあ、 と思えました。
どの章も内容が抱腹絶倒、「本当か?」と突っ込みたくなるようなエピソード満載で楽しく読めるのですが、 最初の章ヤンバル芸人と行く沖縄リゾートの旅は、那覇で生まれ育った私にとっても「へえ〜、そう なんだ!」と思う事実が沢山ありました。沖縄はいろいろな顔を持った、面白いところだと改めて思いました。
次のAサインと伝説のロックンローラーも、聞いたことがある、読んだことがあるAサインバーや60 年代、70年代に活躍してうっすら覚えているミュージシャンについて、面白いというか、壮絶なエピソード 満載で興味深く読めました。
私が一番好きな章はスピリチュアル・オキナワ。沖縄で一般的なトートーメー信仰(先祖崇拝)のことが 面白おかしく書かれていて、特に著者が兄と一緒に首里のムートゥヤー(本家)を訪ねていくところは、笑えま した。ムートゥヤーは大抵首里にあり、家系図をたどると大抵尚家につなっがっている、というところは 「うん、あるある。」とにんまり。著者とその兄、ムートゥヤーのおじさんとのやり取りの描写は著者の 筆が冴えわたっていて、自分もそこで話を聞き、会話に参加しているように楽しかったです。
ウチナーンチュ、筋金入りの沖縄好きヤマトゥンチュにはお勧めの一冊です。
5/12/12
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