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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、去る7月2日から8日まで二本立てでポレポレ東中野で上映された、「浦添ようどれ〜 よみがえれ古琉球」「よみがえる琉球芸能 江戸上り」を取り上げます。

映画「浦添ようどれ 〜よみがえる古琉球」 まず最初に上映された「浦添ようどれ〜よみがえれ古琉球」ですが、劇場の手違いで 「よみがえる琉球芸能 江戸上り」が先に上映され、ありゃ、これは江戸上りの方じゃないのか、 と思ったところでいきなりぷつんと切れてしまいました。

上映の順番を間違えた旨場内アナウンスがあり、気を取り直して「浦添ようどれ〜よみがえれ古 琉球」上映開始。白黒の画面で沖縄の(むい) が映し出され、何やら不穏な雰囲気で「浦添ようどれ」とナレーションスタート。この声がまたおど ろおどろしくて、まさかのホラー映画?!と思うほど。隣に座っていたおばさん(沖縄の人らしく、 あ、○○先生よ、と何度も画面を指差してちょっとうるさかった)が「津嘉山正種よ」と言っていて、 お、確かにこの声は、と納得しましたが、この映画ではナレーションがちょっと聞き辛かったです。

「浦添ようどれ」は小学生の頃社会科見学か遠足で何度か訪れたことはあるのですが、墳墓というこ とは分かっていたものの、詳しいことは今まで全然知りませんでした。なので、その歴史的由来や意 味を図やアニメを駆使して説明しているところは良かったのですが、延々と現在の景色を写しながら の説明や音楽が情緒的過ぎて退屈。実写とアニメ、発掘のドキュメンタリーなどが転換するところも あまり必然性が感じられず、全体として散漫な印象で、ところどころふっと眠りに落ちかけました。 夏の暑さと劇場内の強すぎる冷房のせいで、集中力が落ちていたかもしれません。

沖縄の海の通商王国としての歴史の説明が、最近読んだ赤嶺守の琉球王国 -東アジアのコーナーストーン (講談社選書メチエ) と重なり、本の中で大いに興味をそそられた中国福州の琉球館のあった町の様子、琉球人墓の映像が 見られたことは、とても嬉しかったです。ウチナーンチュはもちろんヤマトゥンチュが沖縄の歌と踊りだけではなく、この映画 を通じてその歴史にも興味を持ってほしい、そうなっているのであれば非常に価値のある映画だと思 いました。

よみがえる琉球芸能江戸上り 次に上映された「よみがえる琉球芸能 江戸上り」が、実は劇場まで足を運んだ目的 の映画でした。こちらは復元過程が本当に面白くて、最後まで楽しく観ることができました。

「江戸上り」とは芝居や舞踊でよく登場する言葉で、日常会話の中でも行列ができて大変な賑わい、 と言いたい時などに「江戸上りみたい」と言ったりして、意外となじみはあるのですが、映画を観て その意義や内容が非常によく分かりました。

先月琉球舞踊の公演をレビューしたばかりなので、やはり踊りが興味深かったのですが、今では大 きな花笠をかぶって踊られる「四つ竹」が、当時は竹の葉っぱのカチューシャみたいな飾りが使わ れていたり、着物や帯の形や着付けがちょっと違っていたり、160年の時の流れを感じました。 しかし同時に、南のこんなちっぽけな王国に、160年前にしてこれほど完成された芸能が存在し ていたことに驚き、誇りに感じました。また、できるだけ異国風、中国風にしたいという薩摩の意 向も受けていたようですが、路次楽と呼ばれる音楽や衣装は実に中国風だし、唐踊りは京劇そのも のであることにも驚きました。改めて、中国文化の影響の大きさを実感しました。

絵巻物や琉球の古謡、引用したと思われる中国の音楽の資料を紐解きながら「江戸上り」の芸能を 再現していくプロセスは、圧巻でした。歌でも舞踊でも、現在第一線で活躍している方たちだから こそ、これまで培ってきた知識、想像力を最大限に活用して再現できたのでしょう。録音テープや DVDがあるわけでもないのに、よくぞここまで、とただただ驚くばかり。舞台で再現されている 踊りと、絵巻物の絵が見事にオーバーラップするラストは感動的でした。

今年2月に三越劇場で一回限りで行われた「江戸上り」公演を、私はきっと何か理由があって本サ イトのイベントコーナーで紹介しながら行けなかったのですが、行かなかったことを心の底から後 悔しました。近い将来「次」の公演が行われることを願って止みません。

7/15/11

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