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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、日本初の中学生監督作品として話題になったやぎの冒険を取り上げます。 

やぎの冒険 去年の夏沖縄で公開された映画でヒットしたらしい、ということで池袋の映画館でお正月映画 としてかかっていたので観てきました。

映画はテレビやDVDで気軽に見られる昨今、私が映画館まで出かけて観るのは年に数回のことで す。なので、映画館で観るのは好きな監督、俳優が出ている作品で大型スクリーンで観る価値のあ るもの、と決めています。今回観たやぎの冒険は残念ながらこの条件に全然当てはまって いず、しかも池袋という街があまり好きではないので、沖縄映画だというだけで普通だったら観に 行かない映画だったと思います。でも、お正月に他に観たいと思う映画がなかったことと、サイト で観た映画の風景がフクギの並木で有名な今帰仁の村のように見えたことで、内容はともかく、風 景を見に行こう、と思ったのでした。

というわけで、内容には全然期待しなかったのですが、内容もとても良い映画でした。映画を観る 時には期待しない、というのが肝かもしれませんね。

もともと「トム・ソーヤーの冒険」とか「スタンド・バイ・ミー」とか男の子が成長するストーリ ーが好きなのですが、この映画も監督自身がローティーンということで男の子の心の動きが瑞々し く描かれていて、好感が持てました。少年独特のはにかみ、戸惑い、乱暴さがヤンバルの自然の中 で素直に描かれていたと思います。

主人公のヒロトも良かったけれど、従弟?のリュウヤ、オバア、オジイ、ひろしおじさん、といった 周辺の人たちも良かったです。オバアは私の子供の頃は歌劇のプリマドンナだった吉田妙子(今でも きれい)、オジイは私の大好きな「運玉義留(義賊。石川五右衛門の沖縄版といったところでしょ うか)」を演じていてアイドル的存在だった平良進。「ナビイの恋」の頃まではイケメンの面影を十分 残していましたが、残念ながら10年後の現在はただのオジイ。でも、いい味出してました。

特に私が気に入ったのはひろしおじさん。沖縄のお笑い芸人らしいのですが、私は全く知りません でした。今後チェックしてみようと思いました。沖縄にはいるいる、こんなおじさん、とくすっと 笑ってしまうようなリアリティーがありました。足を怪我していて(仮病?)毎日仕事もせずブラ ブラ、乱暴だし口は悪いし、でも憎めないおじさん、というキャラクターを自然体で演じていて良 かったです。

おっと、忘れていけないのがヤギ。可愛い〜。ヒロトもリュウヤも可愛がっていて、こんなに可愛 いペットを食べるなんて、ヒロトの戸惑いも当然、という感じでした。そしてその演技力!?私の 叔父も常にヤギを飼っていて、母の実家に行くと身近にいたのですが、走っているところは見たこ とがありません。まあいつも紐でつながれているから当たり前なのですが、逃走しているヤギを見て、 素直にどうやってあんなに走らせているんだろう?と思いました。

期待していたヤンバルの風景は、期待とはちょっと違ってくすんだ感じ。ぴかぴかの青い海、鮮や かなフクギの緑、といった色を想像していたのですが、全体に曇っていて灰色の感じでした。でも、 それがこの映画が観光映画ではなく、少年の成長物語の映画であり、沖縄の海辺の村のリアリティ ーをかもし出していたと思います。よく考えると、お正月の頃の沖縄は確かにいつも曇っていてぴ かぴかの亜熱帯、という感じではありません。

選挙運動の様子やヤギ汁をふるまう様子などは、私の知っている感じとはちょっと違っていましたが、 ヤンバルの海辺の村ではそうなのかな、と納得できる感じでした。ただ一つ気になったところは、 ひろしおじさんの後輩?が新築祝いでヤギ汁をふるまうシーンで、30代前半の夫婦が赤瓦の木造 の家を新築するのかな、とちょっと違和感を覚えました。

冒頭ヒロトが那覇からヤンバルへバスで向かうシーンで、はっきりと普天間と分かるショットがあり、 選挙の演説でも「基地を誘致して村に雇用を」と訴えていて、映画の本筋とはあまり関係がありませ んが、そういうところも沖縄の現実をさりげなく映していて好感が持てました。お正月にわざわざ 映画館まで出かけて観る価値はある映画でした。

1/21/11

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