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今月のレビュー
このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。
今月は、5月1日(土)から5月5日(水)の5日間にわたり盛大に開催された恒例の大沖縄文化祭
川崎「はいさいFESTA」で特別上映された映画オバアは喜劇の女王 〜仲田幸子 沖縄芝居に生き
る〜を取り上げます。
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私が子供の頃から大好きで、テレビで舞台の中継があると何はさておいても釘付けになってい
た笑いの女王、仲田幸子のドキュメンタリー映画です。
沖縄には多くの喜劇役者がいますが、女優さんとなると数は少なく、代表的なのは仲田幸子と北島
角子と言えるでしょう。北島角子はひとり芝居を県外で上演することもあり、ヤマトでも意外と知
られていると思うのですが、仲田幸子は今でも県内で昔と同じように公演を行っているようで、ほ
とんど知られていません。北島角子ももちろん素晴らしい役者だと思うのですが、私が好きなのは
何と言っても仲田幸子。彼女がヤマトでは無名な存在なのが惜しい、と思っていたのですが、夫曰
く「北島角子の笑いは普遍的だけど、仲田幸子の笑いは沖縄独特で、県外では通じない性質のもの」。 |
いくら私が大好きでも、仲田幸子が平良とみや登川誠仁のようにヤマトでも人気者になることはな
いんだな、思っていました。しかしこの映画を観て、この映画を撮った監督がヤマトゥンチュの
出馬康成という人だということを知り、いやいや、仲田幸子にはウチナーンチュだけではなく世界
中の人を虜にする何かがある、この映画が仲田幸子を県外に知らしめる第一歩になるかもしれない、
と思いました。
仲田幸子がこの映画によってメジャーになるかどうかはさておき、ファンにとって非常にありがた
い映画になっていることは確かです。まず喜劇役者としての仲田幸子の魅力がしっかりと捕らえら
れています。過去に上演された舞台の映像がふんだんに使われていて、そのほとんどを観た覚えの
ある私にとっては「ああ、懐かしい」を連発する幸福な時間でした。そして、今断片的に観ても、
やっぱり可笑しい。
舞台映像と同じくらい、仲田幸子本人をはじめ関係者に対するインタビューも充実していて、役者
としての仲田幸子だけでなく妻として、母として、オバアとしての彼女の人生もよく描かれていま
した。一番感銘を受けたのは、座長としての責任感と厳しさ。全ての演目について台本がないこと、
従って彼女が全ての出演者に口移しで演技をつけていること、最初の舞台挨拶で観客の嗜好を瞬時
に判断し、その場で演目を変更することもままある、ということに本当に驚きました。
仲田幸子の後継者と目されている仲田まさえ(オバアと違ってすごい美女!)のナレーションも良
かった。声がすごく良くて、歌手としても活動しているようなので、機会があればライブに行った
りCD聞いたりしたい、と思いました。
映画の最後に、仲田幸子とまさえの二人が人気のない首里劇場で会話する場面があって、木造のレ
トロな劇場で窓からは日光がまぶしく降り注いでいい感じでした。しかし映画でもいかがわしげな外観がちらっと映って
いましたが、この首里劇場、私の実家近くにあって、子供が近寄ってはいけないポルノ専門映画館
みたいな劇場なのです。古い名作映画が2本立てで掛かることがあり、友人と勇気を振り絞って
劇場内に入ると、いきなりベンチに寝転がっているおじさんの脛が目の前に飛び出したり、おしっ
このような臭いが鼻についたり。そんな劇場でも、映画の中ではレトロでシックな劇場に見えるか
ら不思議でした。
久々に見る舞台上の仲田幸子はちっとも年を取っていないようでしたが、楽屋で歩いている姿は
やはり76歳、足元がちょっと心配な感じでした。実はテレビで見るばかりで、生の舞台を観たこ
とがないので、来年の母の日公演は沖縄まで観に行きたい、そう思わせる映画でした。
5/13/10
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