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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、ひめゆり平和祈念資料館のリニューアルの総合プロデューサー・コーディネーターを勤め た柴田昌平監督が13年かけて作った、2時間10分の長編ドキュメンタリー ひめゆり です。 


監督:柴田昌平
製作・配給:プロダクション・エイシア
共同製作:財団法人沖縄県女師・一高女ひめゆり同窓会
しばらく前にこの映画の存在を知っていて観たいと思っていたのですが、今年は機が熟したと いうか、沖縄関連イベント情報で取り 上げて上映日時と場所をしっかりチェックして、夫と娘を伴って上映会に出かけました。

以前知人が8月の原爆投下と同じ時期に 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館を訪ねたい、と話した時に、同じ時期に追体験するという 発想に新鮮な印象を持ちましたが、この ひめゆりを梅雨真っ只中の6月20日に観たことには大きな意義があったと、映画を観終わって まず感じました。

私たちが映画を観た6月20日は梅雨の晴れ間の、太陽の光が降り注ぐ日でしたが、空気は梅雨らし く湿っていました。映画の中で、ひめゆりの女学生が壕の中で看護要員として働いたのは、梅雨の 時期だった、との証言があり、6月18日に陸軍病院から解散命令が出され、私が映画を観ている 6月20日ごろ、彼女たちは山城丘陵や荒崎海岸で地獄を見ていたのだと思い知りました。

この映画は機会があればいつでも、世界中の人に観てもらいたい映画ですが、やはり彼女たちが 戦場にいたのと同じ季節に、慰霊の日の直前に観ると、彼女たちの苦しさや訴えたいことがより伝 わる、と言うか身近に感じられるような気がしました。私はまだ 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館を訪れたことがないのですが、今は8月の、できれば6日 に行きたいと思っています。

子供の頃からひめゆり部隊(そう言えば、映画の中ではこの言葉が一度も使われていませんね)に 関する本を読んだりドラマを見たり、家族から話を聞いたりしてよく知っているつもりでしたが、 2003年に初めてひめゆり平和祈念資料館 へ行き、生き残った元女学生の証言を聞き公式ガイドブックを読んで、実際に体験した人の証言を 聞く重要性、その証言の訴える力を強く認識しました。映画 ひめゆりはこれまで聞いた証言やガイドブックの手記の内容と当然ながら同じなのですが、 ドキュメンタリー映画だからこそ表現できたものがある、と思いました。

実際にひめゆりの塔の前で手を合わせ、平和祈念資料館で命を絶たれた女学生の顔写真に囲まれると、 現場の力に圧倒され悲しみに押しつぶされそうになります。それは絶対に必要な体験だと思うのです が、この映画を観ることも同じように重要な「体験」になると感じました。まず、資料館を訪れる 際に聞けるのは一人の方の体験ですが(それだけでも聞く価値はありますが)映画では多くの方の 生の声を聞くことができます。そして一番感嘆するのが、証言が当時の野戦病院の跡や壕の入り口や、 逃げ惑った場所、海岸で撮影されていることです。

そういう場所に立つことはどんなに辛いでしょう。そこに立って証言出来るようになるまで半世紀以 上の年月が必要だったこと、そしてそんなに長い時間が経った後でも悲しみは消えず、戦争を知ら ない私たちに訴えたい彼女たちの無念さ、悔しさがある、ということに胸が詰まります。女学生の 頃の写真と氏名がまず画面に現れ、次に現在の風景が映し出されて彼女たちの証言が始まる、とい う手法、戦争に駆り出されてから海岸で捕虜になるまでの証言が時系列で並べられ、証言をバック アップする形で当時の記録映像が挟まれるのも、現在の私たちの理解を助けていると思いました。

プロローグのマーラーの交響曲、エピローグで流れる卒業式で歌われる予定だった「別れの曲」も、 邪魔にならずこの映画によくマッチしていたと思います。以前ここで紹介した 未決・沖縄戦のDVD同様、忘れてはいけない、出来るだけ多くの人に観てもらいたい沖縄戦の 記憶です。

6/23/09

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