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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、2009年2月22日に池袋の豊島区民センターで行われた 第4回 沖縄かりゆし寄席 INいけぶくろ です。 

出演者
しゃもじ
ホーム・チーム
◎秋葉シーサーズ
◎豊岡マッシー&としこ
藤木勇人
いっこく堂
キャン×キャン
偶然見つけたこのイベント、沖縄の寄席って一度も見たことない し、大好きな藤木勇人が出てるし、まだちゃんと芸を見たことのないいっこく堂が出ているから、 と軽い気持ちでチケットを買ったものの、他の出演者は誰一人知らず、公演日時が近づくにつれ不安 が広がっていきました。もともと漫才やお笑いが大好きでテレビのお笑い番組をよく見ていたので すが、年を取ってきたせいか最近のお笑いは瞬間芸、一発芸の連続で全然面白いと感じないのです。 藤木さんといっこく堂以外の出演者は皆若そうで、面白くなくて座っているのが苦痛だったらどう しよう、沖縄ネタが東京のお客さんに全然受けなくて可哀想だったらどうしよう、と。

しかし、それは全くの杞憂でした。会場に20分も早く着いたのに、空席を探すのが難しいほ どの盛況ぶり。カチ、カチ、と沖縄(ウチナー) 芝居でおなじみの拍子木が鳴る頃は満席で、「珍しく(・・・ )定刻に開演します」というアナウンスで既に観客は爆笑、いい雰囲気でスタート しました。

トップバッターはおそらく一番若いお笑いコンビのしゃもじ。沖縄の若者そのもの、という感 じですが、小柄なしゅうごとぽっちゃりのターニーという見た目が、すでに安心できるお笑いコン ビの古典的姿。テンポの良いこの人たちの芸を見ただけで、今日は来た甲斐があったなあと思いま した。次のホームチームはウチナーンチュの与座くんとヤマトゥンチュの檜山くんのコン ビで、こちらも見た目が対照的でそれぞれウチナーンチュとヤマトゥンチュの典型、という感じ。 プロフィールを見ると二人とも日本映画学校俳優科の卒業生で、俳優としての訓練を十分に受けた ことが分かる芸風です。フツーのヤマトゥンチュが変なウチナーンチュに振り回される、という、 ありがちな設定なのにきっちり笑わせるところがすごい。ものすごいパワーを感じました。

次に出て来た秋葉シーサーズはこの寄席のために結成されたユニットらしいですが、普段か らずっと一緒のコンビのように息ぴったりで、パワフルでした。特に司会も務めたシーサー玉城さ ん。可愛い容姿とアニメ声で、沖縄のお姉さん(ネーネー) パワー炸裂!という感じで突き抜けていました。豊岡マッシー&としこの二胡と太鼓の演奏は、あ、 最初に指笛の演奏もありました、笑いで熱くなった体をクールダウンさせる効果がありましたね。 特に三線を二胡の弓で弾いた時の音色には癒されました。

十分間の休憩の後、藤木勇人が登場したのには驚きました。出演者のうち最年長で、当然 トリだと思っていたからです。開口一番「東京は寒いね〜!」と真冬並みの寒さを託っていました。 藤木勇人は期待が高かっただけに、面白かったけれど予定通りというか、全然期待していなかった 若手のパワーの後だけに、ちょっとパワー不足、疲れ気味な感じでした。それでも期待を裏切らな いのはさすが、ですが。ウチナーグチに対する造詣の深さ、時事問題もたくみに取り入れる柔軟さ、 そしてやっぱりこの人の話は人柄がにじみ出ていて面白いです。

藤木勇人がトリでなければ当然この人がトリでしょう、と思っていたので、次にいっこく堂 が出てきたのには、またまた驚きました。でも、前日たまたまNHK教育テレビで彼のご両親の インタビューを聞いたり、彼が初めて作詞作曲した「生きてるだけでそれだけで」を聞いたりして いたので、当日彼の芸を鑑賞できたのはグッドタイミング!でした。初めて見た腹話術でしたが、 正直彼と人形達が会話している間、普通のコントを見て笑っている感じで、いっこく堂が一人でし ゃべっているとは一瞬たりとも意識しませんでした。本当にすごい芸です。そして圧巻は客席から 急きょ呼び寄せたお客さんとのパフォーマンス。そのお客さんもただ者ではない、と思いましたが、 客席の中から彼を瞬時に選んでしまうのも、いっこく堂の芸のうちなのかもしれません。どこから どう見ても濃い〜沖縄顔なのに、身のこなしがスマートで品があり、そして何より声が素晴らしか ったです。すっかりファンになりました。

藤木勇人やいっこく堂を押しのけてトリを取るあんたたちって・・・と私の疑惑に満ちたまなざし を受けながら(当然気付いていないと思うけど)登場したキャン×キャン。いや〜、さす がはトリ、の面白さでした。ここまで登場してきたユニットと共通することですが、二人とも品が あって教養がある感じなので、結構汚いことを言っても下品にならない。そして笑いがより洗練 されている感じがしました。東京に進出してきているようなので、普段全く見ないお笑い番組や バラエティーもチェックしてみようかな、と思いました。でも、テレビではなく舞台だからこそ、 の芸かもしれませんね。

期待以上に面白くて、次の11月公演も絶対行こう、と決めていますが、気になることが一つだけ。 東京公演だったからかもしれませんが、しゃもじホームチームキャン×キャ ンの芸で沖縄っぽくしゃべる部分はあるのですが、全体として達者な標準語でヤマトの芸人と あまり変わらない感じ。おそらく一時期ヤマトで徹底して標準語を叩き込まれ、いつかは全国区の 芸人に、という志を持っている人たちだと思うのでそれはそれで良いと思うのですが、彼らによるオールウ チナーグチの漫才も聞いてみたい、と思いました。

2/27/09

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