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89分カラー作品 監督:輿石 正 制作:じんぶん企画 沖縄県高教組推薦 |
夫の従姉の娘さんが制作に協力した(インタビュー、音楽担当)ということで、従姉に勧めら
れるままに購入したDVDですが、今まで知らなかったこと満載で大いに考えさせられる内容でした。 沖縄戦当時12歳だった私の父の家族は、「兵隊さんが守ってくれるから」と信じて首里から摩文仁まで ほぼ日本軍と同じルートで逃げ、終戦を迎えているので、私は子供の頃から沖縄戦の悲惨さをことある ごとに聞かされ、沖縄戦と言えば米軍が上陸した読谷から摩文仁までの、主に本島南部で繰り広げられ た死闘を意味していました。一緒に逃げた家族や隣近所の人たち約20名の中で生き残ったのは父と 祖母のたった2名であったのに対し、父の親戚で北部に疎開した人たちは全員無事だったことから、 私は北部は戦時中と言えどもほぼ平穏であった、と考えていたのでした。 |
そんな私の認識を一変させたのが、親戚の娘さんが関わっているから、と軽い気持ちで観たこの 映画です。
まず、予備校の先生が作っているだけあって、非常に分かりやすい。随所に盛り込まれる資料・記
録映像・情報や証言が的確に分かりやすく編集されています。冒頭で、まず
だけど、戦争の真実は重い。どのように映画を作ろうとも、経験した人の証言には真実だけが持つ 力がある、と感じました。断片的に、知識として知っていた伊江島における戦闘や朝鮮から連れ て来られた軍夫や慰安婦のことが、実際に体験した人、目撃した人の証言を聞くことで、ああ、そう だったのか、とすとんと納得できる。この映画を観終わって、戦争を知らない全ての人に、この映画 を観てもらいたい、と思いました。
沖縄戦についていろいろなことを教えられ、考えさせられた映画ですが、私が一番目からウロコ、と 思ったのは沖縄国際大学の石原昌家教授による「沖縄戦の捏造のしくみ」の説明です。教科書検定に 反対する沖縄の県民大会の盛り上がりは記憶に新しいところですが、おそらく映画のこの部分は、 その教科書検定を意識したのでしょう、非常に丁寧に分かりやすく説明されています。1952年に 施行された「戦傷病者戦没者遺族等援護法」が捏造の原点であること、「集団自決」が死に追いやら れた住民を美化する軍隊用語であること、が本当に良く理解できました。
エピローグで、沖縄の景色をはさみながら映し出される1991年から2007年の有事法制化・憲 法改正の流れを見て、やっぱりこの国は戦争に向かって突き進んでいるのかな、という普段漠然と感 じている不安が具体的に示されているような気がして、言いようもない恐怖を感じると共に、何とか しなければ、と思いました。その第一歩として、できるだけ多くの人にこの映画を観てもらえるよう、 努力しよう。最後に、親戚のお嬢さんが作ったからという訳ではありませんが、バックに流れている 音楽も、主題歌も映像にマッチしていて素晴らしい、と思いました。
*輿石さんのブログで、本映画の予告編 が見れます。映画に関する記事も、理解を深める助けになる、読み応えある内容で一読をお薦めします。
1/15/09
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