Home>今月のレビュー>サイトマップ


今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今回は、去る2008年9月27日(土)三鷹市公会堂で開催された島唄コンサート、(ちゅ)ら海から音楽の風〜琉球島唄めぐり を取り上げます。 

去年このレビュー大島保克 with ジェ フリー・キーザーで取り上げた大島保克が出演するということで、市報で案内を見た瞬 間に行きたい!と思ったコンサートでした。たまたま三線のおけいこ仲間が三鷹市芸術文化振興財団 友の会MARCLの会員で、前売りチケットを会員料金でゲットしてくれて、しかも座席が前から 三列目で出演者の表情もアップでばっちり見れて、久しぶりに琉球の音楽と巧みなトークに酔いしれ ました。

出演者は他に沖縄ポップス界の大御所にして登川誠仁の一番弟子、知名定男( ちなさだお)と沖縄民謡界の歌姫我如古(がね こ)より子。この二人の唄をじっくり聴くのは初めてでしたが、そんな私で も知っている有名歌手ということで、三人の名前が並ぶと超豪華、行かないわけにはいかないでしょ う、という感じでした。

会場へ入ると、ロビーで沖縄物産展のように黒糖やらシークヮーサージュースやら沖縄そばやらが並 べられていて、目に留まった懐かしい亀の甲せんべいと、以前お土産に頂いて美味しかった久米島産 味噌クッキーを早速買ってしまいました。ホールへ入ると前売り券を買ってくれた方をはじめ、三線のテーゲーの会 の他のメンバーはとうに着席していて、期待に胸が高鳴ります。でも会場の入りが悪く、客席の両端 や後ろの方はガラガラで、みんな豪華な出演者に失礼だ、宣伝不足だ、財団の怠慢だ、とぼやくこと しきり。私も本当にもったいないことだなあ、と思いました。

間もなくスタートしたコンサートのトップバッターは大島保克。エンジ色の地に黒い大胆な 図柄の椰子の葉が描かれたかりゆしウェアを着て、おでこをぴかぴかに光らせて(意図して光らせて いる訳ではないでしょうが、本当にピカピカでした)登場して、歌う前の佇まいも素敵。初期のオリ ジナル曲や八重山民謡を5曲歌って、変わらぬ哀愁を帯びた美声を聞かせてくれました。最後に私の 大好きな「流星」を熱唱。ここまでで、私はこのコンサートに来て本当に良かった、と満足しました。

その大島保克の紹介で次に登場したのが、我如古より子。赤い絣の着物のウシンチー(琉球 独特の、帯を使わない着付け方)にウチナーカンプー(銀のかんざしを使った沖縄髪)という完璧な 琉装もあでやかで、琉球人形のような美しさでした。そして、その声の艶やかなこと。数年前に夫が 友人に連れられて、沖縄市にある彼女のライブハウスへ行ったことがあり、とても楽しかったと語っ ていましたが、こんなに美人で庶民的な愛嬌もあり、美しい歌声ならそりゃ、楽しかったでしょう、 と納得しました。余談ですが、そのライブで三線片手に飛び入り参加していたのは、ヤマトゥンチュ ばかりだったそうです。

後に登場する知名定男が、彼女の歌声には「華」があると評していましたが、その声で歌うデビュー 曲「女工節」の切ないこと。初めて聴く唄で、私は沖縄からも沢山の娘達が売られて女工になった 事実をそれまで知らなくて、歌詞を聴いて胸が詰まりました。今三線で練習している初心者向けの 「娘ジントーヨー」や「てぃんさぐぬ花」を歌ってくれて、またまた大満足。当たり前ですが、本 当に上手でした。私は三線も唄も下手ですが、何より難しいなあと思って未だに声を出すことさえ 出来ないのが、唄の合間に入れるお囃子というか、合いの手。彼女はそれが本当に上手で、彼女の 「ハイヤ」とか「イヤーサッサ」が入ると、唄がぐっと華やかになるのです。そして、形の良い真 っ赤な唇をすぼめて、指笛のように口笛を吹くところも色っぽくて素敵でした。彼女のコーナーの 最後は大島保克とのデュエットで、またまた私の大好きな西武門節。しっとりとした情感があって、 素敵でした。

最後に登場したのが最年長の知名定男。有名人ですが、実は私の期待度の一番低かった歌手 です。というのも、彼は70年代に「バイバイ沖縄」というポップスというか、フォーク調の歌を 地元で大ヒットさせているのですが、ヘナヘナした声で、風貌も「かぐや姫」のメンバーみたいな長髪で 小汚い感じで、巷ではよく歌が流れていましたが、私は全く興味が持てませんでした。その後彼は実は 民謡がうまい、ネーネーズをプロデュースした、とか師匠である登川誠仁と共演した、と聞いても昔の へなちょこポップス歌手のイメージがつきまとって、彼の歌を聞いてみる気にはなれず。ところが、 今回舞台に登場した知名定男は、ダークグレーの着物をきっちり着込んだ白髪の老人。「民 謡界の朱鷺(トキ)と言われています。」と、 自嘲気味に自己紹介していましたが、いやいや、渋くてかっこいい。そして張りのある声と三線の早 弾きに、私は完全にノックアウトされました。じっくりと歌われた「屋嘉節」では反戦の思いがしっ かりと伝わってきたし、大島保克とのトーク&競演も楽しかったし、このコンサートで一番株が 上がったのは、知名定男でした。

アンコールでは出演の三人をはじめ、会場全体で「安里屋ユンタ」を合唱し、最後はお決まりの カチャーシーで、最初から最後まで幸せな気分でした。 10/02/08

このページに関する要望、感想などはこちらへ

お名前:
メールアドレス:
ご感想:

HOME