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[ちゃんぷるー・どっとこむ
応援団
寄稿]
愛
さ、
沖縄
76.タクシーのおじさんU
10年ほど前の、あの有名なNHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」、観ていた方はたくさん
いたと思います。ちゅらさんの主人公エリーのお父さんはタクシーの運転手さんですよね。あのド
ラマを観て、いろいろな人に「ねえねえ、沖縄のタクシーの運転手さんって、みんなさんしん弾け
るの?」と聞かれました。うちなんちゅは「あんな人いないさー」とも言っていましたが、それは
実在するのです。私はさんしんを弾く運転手さんのタクシーに乗ったことがあるのです。
あれは「ちゅらさん」が始まるだいぶ前のことでした。ホテルを出るといつものように、「お姉
さん、どこ行くの?おじさんのタクシーでいこうか〜」とタクシーのおじさんに言われました。そ
の日の予定は「コザの照屋林助のお店に行く」ということだったので、「コザまでだからバスで行
く」と断りました。おじさんは「えー、おじさんのタクシーなら安いよ」と食い下がります。「だ
って、一人だもん。タクシーじゃお金かかっちゃうよ。ビーチにも行きたいし。」と言うと、「一
日3000円でいいよ。あんたが遊んでいる間におじさんは他のお客さん乗せて、待ち合わせして
ビーチで降ろしてあげるから。トロピカルビーチだったらバスもたくさんあるから帰れるさ〜」と
いうことで、タクシーで行くことにしました。出発するとおじさんは「コザまで何しに行くのか〜
」と聞くので「照屋林助さんのお店に行く」と言うと「へー、珍しいねえ、沖縄の歌が好きか?お
じさんはさんしん弾けるよ〜。ちょっと待ってね。」と、タクシーを停めてトランクからさんしん
を出しました。「ほら、ケースから出して弾いてごらん。工工四(楽譜)もあるさー。」と言われ
たものの、その頃の・・私はまださんしんを習っていなかったので、ちんぷんかんぷん。おじさん
は運転しながら、弦の押さえ方を教えてくれようとしますがさっぱりわからず、結局、交差点で停
まる度に少し弾いてくれました。
そうこうするうちに、コザに着き、照屋林助さんのお店も探してくれましたが、お店はお休みで
した。でも、コザの町を散策することにして、「じゃあ、1時間後にここでね」と別れました。私
がぶらぶらしている間に、お約束のように雨がザーザー降ってきて、タクシーに乗ると「すごい雨
だね。ビーチに行くって言ってもこれじゃあねえ。まあ、とりあえず向かおうか」ということにな
り、私の希望のトロピカルビーチに向かいました。しかし、雨脚は強くなる一方で、道路は大渋滞。
1ミリも前に進まなくなってしまいました。すると、こののんきなおじさんは、「あい、渋滞さー。
さんしんでも弾こうね〜」と、タクシーの中でずーっとさんしんを弾き、歌いまくりました。30
分近くおじさんの独演会が続いた頃、なんと58号線は雨のため通行止めとなり、ビーチなんて、
優雅なことを言っていられなくなり、とりあえずお昼ご飯を食べることにしました。わたしの旅に
つきあうはめになったおじさんは、「今日の稼ぎは3000円だ・・・。」としょんぼり。かわい
そうだったので「おじさん、お昼は私がおごってあげるよ」と言い、おじさんの行きつけの安いス
テーキ屋で食べて、雨の中ちょっとだけでも海が見たいという私の希望に応えてくれて、砂辺
の堤防脇を走ってくれました。
トロピカルビーチ周辺にさしかかっても雨はやまず、おじさんは「こんなに土砂降りの中、約束
だからって降ろすわけにはいかないよ。おじさんの心が痛む。那覇まで送ってあげるよ。」と、さ
んしんの話をしながら、那覇に戻り、3000円のタクシーの旅は終わりました。ホテルに着いて
「おじさん、ありがとう。結局往復になっちゃったからもう少し払うよ」と言うと「あ〜、いいさ〜。
約束だからね〜。」と、とってもいいおじさんでした。次の日もおじさんはホテルの前にいて、
「おはよう、今日はどこ行くの?買い物?じゃあ、往復でワンメーターでいいよ〜」と、歩いて1
0分のショッピングセンターまで往復してくれました。「また、沖縄に来たらおじさんのタクシー
に乗ってね。」と名刺をいただきましたが、「タクシーのおじさんT」
同様、次の旅には次のタクシーのおじさんがにこやかに迎えてくれる沖縄です。
今では、ホテルの前で「どこ行くの〜?」と観光客に声をかけるタクシーのおじさんはあまり見
かけなくなり、この声をかけることが問題になったのかなあとさみしいこの頃です。あのさんしん
タクシーのおじさんは、元気かなあ。どこかでまた会ったら、今度は私がさんしんを弾いてあげた
いなあ。
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